前回にハッカパイプを買ったきり、一年間お休みしてしまった。お祭りなので道草を食ったことはお許しいただきたい。
今、糸魚川に来ている。桜が満開だ。けれど山々の頂きにはまだ雪が残っている。祭りが済んでようやく冬は春にその席を譲るのだ。
さて、「ジョウバ」の話を書きたい。ジョウバとは獅子のことだ。「除魔(じょま)」が語源と聞くが、定かではない。子どもの頃は「上歯」だと思っていた。歯を打ち合わせるとかたかた鳴る、その音が怖かったからだろう。
獅子には一人一匹の一人立ちと、二人あるいは数人がほろの中に入ってあやつる二人立ちがある。
ジョウバは一人立ちで、獅子舞は舞わない。神の使いであり、神輿を守護する。ぎょろりとした目、大きな鼻の穴、むきだしの歯、動く耳──まさに魔除けで、悪魔も鬼も逃げていくだろう。
頭を噛んでもらうと一年間無病息災となる。子どもの場合は頭が良くなるといわれる。
だから赤ん坊や子どもをジョウバの前につれて行く。もちろん子どもは泣き叫ぶ。中にはきょとんとして何が起きたかわからず、泣かない子もいる。噛んでもらった記憶はないが、私はきっと泣いただろうと思う。