雁木は各商店の軒を連ねた私道だが、隣と隣の間が離れていて、雁木から路地が伸びているところがある。人一人通れるだけの細道。どの家も町屋造りだから鰻の寝床のように長い。三、四十メートルはあるだろうか。
 子どもの頃、その路地は不思議な空間だった。もちろん、通り抜ければどこに通じているかはわかっている。
 いや、本当にそうなのか? 細い路地でふと立ち止まり見上げれば、両側の家はそそり立ち、切り取られた空ははるかに遠い。このまま進めば、見知らぬ世界に出るのではないか。来た道を戻っても元の世界に帰れるのか。「おまんは誰ね?」といわれそう。
 賑やかな表通りとひっそりと人影もない裏通りの対比がそんな想像をかき立て、怯えさせたのだろうか。
 見知った風景が反転して、ふと迷子になるような感じ──これが私の心の中の原風景かもしれない。だから、冷蔵庫を開けると牛が出てくるようなお話を書いているのかもしれない……
 ポコペンやかごめなど遊びはまだまだある。冬の遊びのかっちん玉も書き残しておきたい。でも、遊びの項をひとまず閉じ、次回は四月の祭りの思い出を。春が来る!

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